体重減少とは
「体重減少」とは、半年の間に体重が5%以上減ってしまうことを指します。一般的に「痩せた」と表現される状態ですが、ダイエットなどによる意図的な減量とは区別されます。 体重が元の体重から10%以上減少すると、体の栄養状態や健康に大きな影響を及ぼす可能性があり、早急な原因の特定と対応が必要です。さらに20%以上の体重減少は、多臓器の機能低下や重度の栄養障害を引き起こす危険が高く、注意が求められます。
体重減少の症状
体重減少は、単に体重が減るだけでなく、疲れやすさ、食欲不振、発熱、発汗、下痢、吐き気などの症状を伴うことがあります。また、栄養不足が進むと筋力低下や免疫力の低下も生じ、感染症にかかりやすくなることもあります。症状が進行すると、日常生活にも支障をきたすため、早めの受診が大切です。
体重減少の原因
体重減少の原因は多岐にわたります。消化器疾患(胃がん・大腸がん・潰瘍など)や内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、糖尿病など)、感染症(結核、HIVなど)、うつ病などの精神疾患も体重減少を招きます。また、加齢による食欲低下や、服薬の副作用も関与することがあります。原因不明の体重減少は重大な病気のサインである可能性が高く、注意が必要です。
受診の目安
半年で体重が5%以上減少した場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。特に、発熱や下痢、食欲不振、血便、強い疲労感などを伴う場合は、深刻な病気が隠れている可能性があります。体重減少は早期診断が非常に重要ですので、気になる方は消化器内科などの専門医に相談することをおすすめします。
検査・診断方法
血液検査
体重減少の背景にある全身状態を把握するために有用です。貧血の有無、肝臓・腎臓などの臓器機能、炎症反応、甲状腺ホルモンや血糖値などを確認することで、がんや感染症、糖尿病、甲状腺疾患など多様な原因を見つける手がかりとなります。
胃カメラ検査
食欲不振や胃の痛み、吐き気などを伴う体重減少では、胃や食道、十二指腸の病気が隠れている可能性があります。胃カメラでは粘膜の炎症、潰瘍、ポリープ、腫瘍の有無を直接確認でき、必要に応じて組織を採取し、病理検査によって確定診断につなげることができます。
大腸カメラ検査
下痢や便秘、血便などを伴う体重減少では、大腸の病気が原因の可能性があります。大腸カメラでは、大腸全域の粘膜を詳細に観察し、ポリープや腫瘍、炎症性疾患の有無を確認できます。必要に応じて組織採取やポリープ切除も可能です。
腹部エコー検査
腹部の超音波検査では、肝臓・胆のう・膵臓・腎臓などの臓器の状態を非侵襲的に調べることができます。腫瘍や結石、炎症の有無を確認できるため、消化器疾患や肝胆膵疾患が原因で起こる体重減少の評価に役立ちます。被ばくの心配がなく、体への負担も少ない検査です。
体重減少の治療・対応
体重減少の治療は、まず原因を特定することが最も重要です。消化器疾患、代謝疾患、内分泌疾患、感染症、がんなど、原因に応じて適切な治療を行います。例えば、消化器疾患や腫瘍が原因であれば、内視鏡的治療や手術、薬物療法などが選択されます。
また、栄養状態の改善も大切です。食欲不振や消化吸収の低下がある場合には、消化に負担の少ない食事や高カロリー・高たんぱくの栄養補助食品の利用、必要に応じて経管栄養や点滴による栄養補給も行います。 加えて、体重減少が急速な場合や多臓器障害のリスクがある場合は、入院しての管理が必要になることもあります。早期に原因を調べ、適切な治療と栄養管理を開始することが、健康回復への近道です。